着物の染み抜きを自宅で行う方法とポイント

公開日:2023/04/13

「着物の染み抜きって、洋服と同じように家でもできそう」と思ったことはないでしょうか。付いたばかりの小さなシミで、シミの原因が明確な場合には、自宅でも対処できることがあります。しかし、正しい方法で染み抜きを行わないと、着物を傷めてしまうこともあるので注意が必要です。今回は自宅での着物の染み抜きの方法をご紹介します。

汚れを落とす前に汚れの原因特定しよう

着物のシミは、軽いシミであれば自宅で汚れを落とせることがあります。汚れに対しては熱いお湯やアイロンの熱は避け、むやみにこすらないことが大切です。焦ってお湯でこすると、余計にシミが広がってしまったり、さらに深く生地にしみ込んでしまったりするのでやめましょう。

自宅で汚れを落とすためには、まず原因を特定する必要があります。見た目の色やにおい、汚した経緯を思い出してみましょう。シミの成分によってシミ抜きの方法が異なるため、シミの原因を特定することは必須といえます。

たとえば、醤油やジュースといった水溶性のシミがあります。また、口紅、マヨネーズのシミは水に溶けない油溶性のシミです。さらには、泥汚れのような不溶性のシミもあります。油溶性や不溶性の汚れのように、水に溶けない汚れがあるため、むやみに水やお湯で落とそうとしても、落ちないものがあることを覚えておきましょう。

【シミの原因別】着物のシミ抜き方法

シミの原因がわかっていれば、自宅で汚れを落とせるかもしれません。ここでは、原因別にシミ抜きの方法をご紹介します。扱いに注意が必要な溶剤を使用する場合もあるので、充分気を付けてシミ抜きを行ってください。

水溶性(飲料や醤油、ソースなど)の汚れの場合

食事中にうっかり飲み物をこぼしてしまった、ソースが飛んでしまったというケースは多いものです。水溶性の汚れは叩いて落とします

まずは着物を広げ、シミがある部分の裏にタオルを敷きます。40℃ほどのぬるま湯に浸し、しぼったタオルでトントンと、下に敷いてあるタオルに汚れを移すように叩きます。毛羽立ちの原因となるので、こすらないようにしましょう。また、正絹は水分によって縮むことがあります。タオルは固くしぼり、濡らし過ぎないようにしましょう。

洗剤を使用する場合は、中性洗剤を使用します。15倍ほどに薄めて使用しましょう。小さな汚れは、タオルよりも綿棒を使った方がよいでしょう。汚れが落ちたら、乾いたタオルで再度叩いて水分を取ります。あとはハンガーにかけて、乾かします。

油溶性(ファンデーションや口紅、マヨネーズなど)の汚れの場合

食べこぼしの中でも、マヨネーズやステーキソースといった油分を含むもの、またメイクが襟元に付いてしまったという場合には水では落とせません。そこで使用するのがベンジンと呼ばれる溶剤です。ベンジンを使用する際は、必ず窓を開け、換気しながら行うようにしましょう。

また引火性の溶剤のため、ストーブ、コンロなどの近くで使用すると危険です。目にしみたり、吸い込んだりすることがあるので、マスクやゴーグルで目・鼻・口を保護するとよいでしょう。水溶性の汚れを落とす時と同様に、着物の汚れ部分の下にタオルを敷いてから、ベンジンをしみ込ませたガーゼで叩きます。

叩いた部分は濡れて丸く輪郭ができるため、汚れを落としてから、再度ベンジンをしみ込ませたきれいなガーゼで輪郭をぼかしましょう。これを行わないと、輪ジミができてしまいます。汚れが落ちたら、ハンガーにかけ、乾かします。

不溶性(泥、ペンのインクなど)の汚れの場合

雨のあとで地面がぬかるんでいたり、雨や雪が降り出したりして、着物の裾を汚してしまうこともあるでしょう。泥汚れは、まずは完全に乾燥させることが大切です。乾いたらブラシで払って汚れを落とします。汚れが粉のようになるため、払えばほとんどの汚れは落ちます。

自分でシミ抜きするのが難しいケース

今、ご紹介した方法によって自宅でシミ抜きできるケースもありますが、中には自分でシミ抜きしない方がよいもの、自分では汚れが落とし切れないものもあるでしょう。シミ抜きに時間をかけるほど、着物が濡れ、傷みやすくなります。また色落ちや丸染みの原因にもなるので、何度も濡らしたり、叩いたりするのはやめましょう。

どんな汚れは自分でシミ抜きできないの?

ご紹介した方法でシミ抜きできるのは、あくまでも原因がはっきりしている場合です。原因がはっきりしない場合には自分で対処せずに専門店を頼るようにしましょう。下手にシミを落とそうとすると、シミが広がったり、着物が傷んだりすることになります。

また時間が経過したシミは、自宅で落とすことは難しいでしょう。汚れが変色、黄ばんでいる場合には時間が経過しているといえます。そのほか、大きなシミ、血液、水溶性と油溶性が混ざっている汚れの場合も専門店に依頼した方がよいでしょう。

クリーニングはシミ抜き専門店を利用しよう

クリーニングに出す場合は、着物を丸洗いしてくれる店舗ではなく、シミ抜き専門店に依頼しましょう。シミ抜き専門店では、経験を積んだベテラン職人が手作業でシミ抜きを行っているところもあります。

また、シミの原因を調べる診断士がいたり、専門の道具や染み抜き用の溶剤を使って丁寧に染み抜きを行ったりと、自宅ではできないシミ抜き方法で確実にシミ・汚れを落としてくれます

30年以上経過したシミでも取り扱い可能なケースもあり、修復が無理そうだと感じても、一度相談してみる価値はあるでしょう。

汚れが付着しにくい加工をするのもおすすめ

汚さないよう注意していても付着してしまう汚れ。一度汚してしまうと、また汚したら嫌だな…と、着物を着るのが好きでなくなってしまう方もいるかもしれません。

そんな方は着物の撥水加工であるパールトーン加工を施すのもおすすめです。通気性はそのまま、汚れが付きにくく、もし汚れても生地に染み込まずに弾くため、お手入れが楽になるでしょう。

まとめ

着物のシミは程度によっては自分でもシミ抜きすることが可能です。汚れの原因によって、シミ抜きの方法が異なることをしっかりと覚えておきましょう。しかしお手入れの方法を間違えてしまうと、シミが広がったり、生地が毛羽だったりと、大切な着物を傷めてしまうこともあります。

自分にできるか心配、高い着物だから傷めたくない、という方はプロに任せた方がよいでしょう。経験を積み、専門知識と技術を持ったプロに任せれば安心です。しっかりケアして、お気に入りの着物を何十年と着られるようにしたいですね。

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